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こころの病気のはなし > 専門編 > パニック障害のトップ > パニック障害について(2-3)

パニック障害の原因(2)

パニック障害は遺伝要因が一部関係すると言われています

パニック障害の発症の原因については、未だに明確に解明されていません。しかし、「病気にかかり易い体質」つまり先天的な遺伝要因が一部関係しているのではないかと、多くの研究で報告されています。第一度近親者(つまりパニック障害患者の兄弟や子供・親など)の発症率(生涯有病率)は17.3%との報告があり(Croweら;Arch Gen Psychiatry40:1065-1069,1983)、一般人口の発症率の約8倍の危険度となります。

 また、双子研究によれば、片側がパニック障害の場合、一卵性双生児ではもう片側のペアの発症率(生涯有病率)は24%、二卵性双生児では11%という報告もあり、それぞれ一般人口の発症率の約10倍と約5倍の危険度となります。

しかし、パニック障害の原因となる特定の遺伝子は見つかっておらず、多因子遺伝(特定の遺伝子ではなく、多くの遺伝子領域が関わり合って発症する)ではないかと推測されています。

 

パニック障害になりやすい養育・家庭環境の問題はあるか

親の養育態度や家庭環境については各研究の結果は一致せず、ハッキリしたことは明らかになっていません。しかし、養育環境や発達段階での問題を重視する立場である精神分析理論によれば、あくまで仮説ですが、

  1. 無意識の攻撃性や性衝動(平たく言えば、知らず知らずの内に腹立たしい気持ちや性欲を押さえる事。超自我不安という。)
  2. 外側からの現実的脅威(実際はともかく主観的に脅威と認識する。現実的不安という。)

などの結果不安が生じると考えます。パニック障害の人々はこれらの不安に対して、抑圧(意識の外つまり無意識に締め出す、つまり“臭いものにフタ”)や反動形成(思っている事と逆の言動を取る)あるいは転換(身体化とも言う。不安を身体症状におきかえる)といった防衛機制(幼少期の未熟な自分を不安や不満から守る仕組み)を無意識下で働かせると言われます。
これらは、以下の様な報告により裏づけられます。つまり

  1. パニック障害患者が17才以前の離婚や死別・小児期の虐待体験と相関する
  2. 支配的・批判的・指示的である両親の下での療育環境が発症に影響する

等の報告です。(表-3.参照。Kaplan & Sadock, SYNOPSIS OF PSYCHIATRY 9th edition,600,2003)

 幼児期における親の離婚や死別・虐待・厳しい教育などの体験を契機に、「お父さんはどこかへ行ってしまうの」「どうしてお母さんは無視するの」等と思いながら、湧いてくる自らの怒りや不安の気持ちを無意識的に抑え(抑圧)、無意識的に「いい子になろう(反動形成)」と必死に自己防衛していきます。しかし限界に達しあふれ出た不安が徐々に無意識の内に蓄積していきます。そして生涯の内のある時点で突然パニック発作(身体化)という形で発症すると言われます。

 一方、広場恐怖を伴うパニック障害の患者の後ろ向き研究において、患者の母親の養育態度に関しての調査で、過剰不安(43%)過保護(37%)拒絶(11%)など「母親の不安や過保護傾向」を指摘する報告もあります(清田晃生ら;パニック障害治療のストラテジー:32,2002)

表-3. パニック障害の精神力動的主題
  1. 怒りに対する耐性が低い
  2. 小児期および成人期に重要な人物と分離
  3. 職務的責任の増大
  4. 両親が支配的・脅威的・批判的・指示的
  5. 性的・身体的虐待
  6. 陥れられているという慢性的感覚
  7. 親の拒絶的行動への怒りと、それに続く両親への絆を壊す様な空想の不安との悪循環
  8. 自我における不安の警告機能の失敗
  9. 典型的防衛機制:打ち消し・身体化・反動形成・外面化

(Kaplanら、2003より引用)

パニック障害になりやすい性格はあるか

これに関しても、厳密に裏づけられた研究データは未だ存在しません。パニック障害になりやすい性格傾向として、「行動抑制」(人見知り・内気・はにかみ・引っ込み思案)(Biedermanら:Am J Psychiatry157:2002−2010,2000)や「メランコリー親和型性格」(内省的・配慮性・従順・素直・温和)(竹内龍雄;パニック障害.新興医学,東京:33-35,2000)を挙げる研究もあります。

また、悲観的・身体機能への過度のとらわれ・不安定・不確実性・過度の反芻・過度の道徳的感情など(Faravelliら:New Trends Exper Clin Psychiatry3:13-23,1987)を挙げる報告もあります。

一方、依存的あるいは回避的な性格を指摘する報告も多いのですが、いずれも病前性格(病気になる以前の元々の性格)なのか、病気をきっかけとして二次的に生じた性格変化なのか、あるいは併存疾患の影響はないのか、といった事は全く検証されていないのです。

パニック障害の発症と直前のストレス要因は関係するか

これについても比較対照試験などの科学的データが少ないのですが、発症する数ヶ月前の様々な喪失体験(親の死・恋人との離別など)を高率に認めるとの報告が散見されます(Kaplan & Sadock, SYNOPSIS OF PSYCHIATRY 9th edition,600,2003)。

しかし、その様な明確なきっかけを認めない症例も多く見られます。例えば、仕事が忙しく充実感が得られない一方、妻も子育てやパートなどでイライラし、夫婦関係がうまくいかない等が重なり心身疲労を蓄積させた結果、パニック障害を発症する等、特定の一つのストレスや出来事よりもむしろ一定の期間にいろいろ重なる「神経衰弱性のパニック障害」も多いとの指摘もあります(加藤敏,精神科治療学19(8);955-961,2004)。

パニック障害を誘発しやすい物質要因とは

現在までの研究で、多くの物質がパニック発作を誘発しやすい物質として知られて来ました。
代表的な物質に二酸化炭素があります。乳酸は過呼吸や運動をした時に体内に蓄積する物質です。乳酸は脳内に入った後二酸化炭素へ変化します。脳内の二酸化炭素が脳幹の化学受容体へ働く事で、身体が「危機」と誤って認識しパニック発作を起こすと言われています(窒息誤警報仮説、Kleinら)。パニック障害の患者の50〜80%が二酸化炭素の投与によりパニック発作を引き起こされた一方、健康正常人は何も症状を示さなかったとの報告もあります(穐吉條太郎;不安障害の脳科学.臨床科学35:96−101,1999)。

またカフェインもパニック発作を誘発しやすいと言われています。パニック障害患者は、コーヒー1杯(カフェイン約48mg含有)で正常人と比べ有意に不安を来たし、コーヒー10杯分のカフェイン(480mg)で約70%の患者がパニック発作を呈したというデータもあります(精神医学体系 パニック障害 ,P210)。

 

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