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こころのはなし

強迫性障害(強迫神経症)は不安障害の一種です。ある一定のテーマの考えやイメージが繰り返し起こり、手洗いや確認などの行為を繰り返し行ってしまいます。このような手洗いや確認などの行為を行わないと強い不安が生じてしまうのを特徴としています。

その考えや行為のために時間を浪費したり、そのような状況を回避することから社会的活動が妨げられたりする結果、現実の生活に支障が出たり強い苦痛が生じることになります。

 

症 状

具体的には、「ありえない」とわかっていても、繰り返し頭の中に考えが生じ振り払うことができない考え(たとえば「ばい菌が広がって体中が汚染されてしまうのではないか」」が割り込んできます。この考えは強迫観念と呼ばれています。

また、自分では必要ないと分かっていて止めようと努力しても、意に反して繰り返し行ってしまう行動(たとえば必要以上に戸締りや火の元を確認してしまう)がみられることがあり、これは強迫行為・儀式行為と呼ばれています。さらに、症状がひどくなると、家族や周囲の人間に一緒に確認を求めたりと、周囲も巻き込むようになり影響がでます。

 

疫 学

一般人口の2〜3%に見られ、男女比は等しいといわれています。発症する年齢は男性で6歳から15歳、女性で20歳から29歳と開きがあり、その3分の1から3分の2はストレスとなる重大な出来事を経験した後に発症したと報告されています。中には、自身の症状について異常だという自覚をもっていたり、人に症状を話すのは恥ずかしいとの思いのために、隠し続けている方もいます。そのため、発症してから治療を受けるまでの平均期間が7年と長いのもこの障害の特徴です。

症状に対して本人の抵抗が弱い場合やうつ病を合併している場合、妄想様観念をもつ場合は予後不良であり、社会への適応が良い場合や発症した原因が明らかな場合は予後が良いとされています。

 

原 因

強迫性障害は、身体的な感覚であったり、実際の出来事や日常のありふれた生活の行動が引き金となって発症します。その引き金によって、本人が望まずに考えやイメージが入り込んでくるようになり、それを無視またはコントロールが難しいと、他のことを考えたり、特定の行動を行うことによって中和されることが多くあります。

原因は神経物質のセロトニンの調節障害という考えが有力ですが、脳の特異的部位の機能がうまくいかなくなっていることや、回路の機能亢進も関係しているとも考えられています。

 

治 療

現在では、有効な治療方法として薬物療法と行動療法が用いられています。薬物ではセロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)による治療が中心です。行動療法の手法では、代表的なものとして、曝露反応妨害法があり、これは、薬剤の投与などを十分に行ったうえで、強迫観念の引き金となる刺激に徐々にならし、強迫行為をとらなくても不安が生じないことを体験していくものです。これを繰り返すことで、強迫観念や強迫行為を実行しなくても、不安が生ずることがなくなってくることがあります。ただし、現時点でも、完全に良くなる方の割合は、50%程度と考えられており、やや、治りにくい心の病気の一つと言えます。

また、強迫症状は、うつ病、躁うつ病のうつ状態、全般性不安障害、統合失調症等他の精神疾患にひろく合併することがありうるので、安易に治療することには、危険が伴うことがありますので、十分慎重に診断することが必要です。

 

診断基準(Obsessive-compulsive disorder)

DSM-W-TR ICD-10
コード番号300.3 コード番号F42

強迫観念と強迫行為の2つの主症状によって特徴づけられ、そのどちらかが存在する。

 

A.

【1〜4によって定義される強迫観念】

  1. 反復的、持続的な思考、衝動、または心像(イメージ)であり、それは障害の期間の一時期には、侵入的で不適切なものとして体験されており、強い不安や苦痛を引き起こすことがある。
  2. 単に現実生活の問題についての過剰な心配ではない。
  3. それを無視したり抑制したり、何か他の思考または行為によって中和しようと試みる。
  4. その強迫的な思考、衝動または心像が(外部から強制されたものではなく)自分自身の心の産物であると認識している。

【5〜6によって定義される強迫行為】

  1. 反復行動(例:手を洗う、順番に並べる、確認する)または心の中の行為(例:祈る、数を数える、声を出さずに言葉を繰り返す)であり、その人は強迫観念に反応して、または厳密に適用しなくてはならない規則に従って、それを行うよう駆り立てられていると感じている。
  2. その行動や心の中の行為の目的は、苦痛を予防したり緩和したり、または何か恐ろしい出来事や状況を避けることである。しかし、そのような行為は、それによって中和したり予防したりしようとしていることとは現実的関連をもっていないし、または明らかに過剰である。

 

  1. この障害の経過のある時点で、その人は、強迫観念や強迫行為が過剰である、または不合理であると認識したことがある。(注:子どもには適用されない)
  2. 強迫観念または強迫行為は、強い苦痛を生じ、時間を浪費させ(1日1時間以上かかる)、またはその人の正常な毎日の生活習慣、職業(または学業)機能、または日常の社会的活動、他者との人間関係を著しく明らかに障害している。
  3. 他の障害(例;摂食障害が存在する場合の食物へのとらわれ、大うつ病性障害が存在している場合の罪悪感の反復思考)が存在している場合、強迫観念または強迫行為の内容がそれに限定されていない。
  4. その障害は、物質(例:乱用薬物、投薬)または一般身体疾患の直接的な生理学的作用によるものではない。

反復する強迫思考あるいは強迫行為である。
片方あるいはその両方が、少なくとも2週間連続してほとんど毎日存在し、生活する上での苦痛か妨げの原因でなければならない。

 

【強迫思考】

常同的な形で、繰り返し心に浮かぶ観念、表像(イメージ)、衝動である。それらは暴力的であったりわいせつであったり、単に無意味なものとして認識されるため、ほぼ常に苦悩をもたらすものである。本人の意志に反したものであったり、そしてしばしば嫌なものであるにもかかわらず、自分自身の思考として認識される。

 

【強迫的あるいは強迫儀式】

何度も繰り返されるような常に同じ行為であり、本来愉快なものではなく、本質的に有用な課題の達成に終わることもない。

 

客観的にはありそうもない出来事を、しばしば自分に有害であったり自分が原因で起こったと考えているが、それを防止していると思っている。必ずではないが、強迫思考や強迫行為を無意味で効果がないと認識し、繰り返し抵抗を試みるが成功しない。

 

  1. 強迫症状は、その人自身の思考あるいは衝動として認識されている。
  2. もはや抵抗しなくなったものがほかにあるとしても、その人が依然として抵抗する思考あるいは行為が少なくとも1つ以上存在する。
  3. 思考あるいは行為の遂行はそれ自体が楽しいものであってはならない。(緊張や不安の単なる低減は、この意味で楽しいとはみなされない)
  4. 思考、表像あるいは衝動は、不快で反復性でなければならない。
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